「金」の眼鏡で見た おカネの風景

「第2幕」は海底ケーブル

 トランプ氏が中国を訪問し、米中首脳会談が2日間にわたり開かれました。イラン戦争についても話し合われたようですが、習主席から意味のある回答は何も得られませんでした。ルビオ国務長官は、米CNNに対して「北京には何も要求していない」と断言しました。「何の回答も得られないのは、こちらが何も要求していないからだ」という言い訳です。いやはや。

 一方、当事者のイランは、首脳会談の4日前、次の闘いの場は「海底ケーブル」であると明らかにしました。革命防衛隊系のタスニム通信などが相次いで報じたのは、以下の内容です。

 イランは、ペルシャ湾からホルムズ海峡に向かう7本の海底ケーブルを掌握しつつある。この海底ケーブルによって、ペルシャ湾岸諸国と欧米やアジアはデータ通信やインターネットが可能になり、毎日10兆ドル(約1500兆円)の金融取引などを行ってきた。

 海底ケーブルはイランの主権下の領海に敷設されているにもかかわらず、イランは経済制裁によってこうした金融取引から排除され、国家利益と経済のデジタル化の利益を奪われてきた。そこで、イランは今後、すべての海底ケーブルの管理と保守をイラン企業だけが行うよう、新たな方針を作成中だ。

 ①イランは、通信とケーブル運用をする全事業者に許可の取得を義務付け、ライセンス料と年間更新料を徴収するだろう。
 ②海底ケーブルを利用するグーグル、アマゾン、メタなどの大手IT企業は、イランの法律に基づいて事業を行い、イラン企業に協力することが義務付けられるだろう。
③イランは、海底ケーブルの保守・修理の技術を整備し、ケーブルの維持を収益源および国家主権保持のための手段とするだろう。

要するに、「海底ケーブルを利用したければカネを払え」と言っているのです。カネを払わなければ、どうなるのか。イランは「DWDM(高密度波長分割多重)などの先端技術を使う海底ケーブルが損傷されると、取り返しのつかない損失を受けます」と注釈を加えました。ケーブルを破壊するぞと脅しているわけです。

 イランには、小さな潜水艇や10人乗りの小型潜水艦がたくさんあり、海底での破壊工作をやる能力はあります。破壊はきわめて容易、その経済的な損失はきわめて巨額。湾岸諸国やIT企業は対応に苦慮することになるでしょう

 海底ケーブルの脅迫は、湾岸諸国のなかでも米国やイスラエルと仲のよいアラブ首長国連邦(UAE)にとって、とりわけ痛撃になると思われます。UAEは、石油や天然ガスに代わる次の主要産業を「AI」などの新技術に求め、データセンターの集積地になる戦略を掲げてきました。

 そのため、産油国カルテルの「OPEC」や「OPEC+」から一方的に離脱し、米国とイスラエルから賞賛されました。湾岸のアラブ諸国の中でも「反イラン」の動きが目立ちます。

 しかし、データセンターに大量のデータを送るのは、海底ケーブルです。イランが海底ケーブルを掌握すれば、UAEはノド元にナイフを突きつけられるようなものです。

 欧米やアジアの新聞、テレビはほとんどイランの海底ケーブル戦略を報道していません。しかし、ペルシャ湾の湾岸諸国ににらみを利かせ、ホルムズ海峡支配を強化することは、イラン戦争を確実に長引かせます。そして、世界の石油備蓄が底を突く数週間後には、大きな経済波乱が来襲するのではと心配です。(地図はタスニム通信、写真はAl Ittihad、サイト管理人・清水建宇)

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