「金」の眼鏡で見た おカネの風景

ホルムズ海峡の護衛は至難のわざ

 イスラエルと米国がイランを空爆し、宗教指導者と家族を惨殺してから3週間がたちました。イランがすぐにも屈服するとみた米国の目論見は外れ、イランの反撃が激しくなって、世界の石油や液化天然ガス(LNG)の2割が通るホルムズ海峡が主戦場になりつつあります。

 イランは、海峡を封鎖せず、通過させる船と、通過させない船を選別する戦術を続けています。米国の商船はもちろんのこと、米軍基地を置いていたサウジアラビア、湾岸首長国連邦、クウェートなどの産油国に対しては「1リットルも通さない」と宣言しました。

 逆に、自国のタンカーや、「敵対国ではない」とした中国やインドの商船は通過を認めています。これらの船によって、イランは自国原油の輸出を続けており、戦時下でも貿易収入を得ています。「選別」はイラン外交にも有利をもたらします。

 米紙WSJは「石油はまだいい。危機が迫っているのはLNGだ」という論評を載せました。「石油タンカーは世界に9000隻近くあり、ペルシャ湾に閉じ込められているのはそのうちのごく一部にすぎない。しかし、LNG運搬船は世界に50隻ほどしかなく、その半数近い20隻余りがホルムズ海峡を通過できずにいる」といいます。

 LNGはさまざまな用途に使われます。台湾の半導体メーカーは不可欠のヘリウム製造にLNGを利用しており、輸入できなければ操業を停止せざるを得ません。運搬船のチャーター料金は1日当たり10万ドル未満だったのが、2倍の20万ドル(約3000万円)に急騰し、海運業界は悲鳴をあげています。

 トランプ氏は「米軍の戦艦が護衛するから安心せよ」などと主張し、イランの石油積み出し基地や、海峡の対岸にある島への上陸攻撃をほのめかすなど、不安を抑えようと必死です。その効果なのか、ニューヨーク先物市場での原油価格は98ドルに抑えられていますが、アジアの関心が高いドバイ市場では160ドルを超えました。 

この価格は「米軍がほんとうに護衛できるのか」と疑心暗鬼になっていることを示しています。その疑心は当然と言えるでしょう。

 イランが保有する水中武器は、中国や旧ソ連の技術をもとに国産化した最新のものです。例えば「マハム2」型機雷は、水中にあって陸上からの遠隔操作で稼働し、磁気や音響センサーで爆発します。海底に置かれ、攻撃指令で海面に上昇するタイプもあります。

 「フート」は、旧ソ連が開発して「米海軍の悪夢」と呼ばれた高速魚雷を改良したもので、時速360kmの猛スピードで10km先の標的を破壊できます。これを防御するのは困難とされています。ほかにも多数の水中ドローンがあります。

 イラン空爆が始まる少し前、ペルシャ湾にいた1100隻の商船で、突然GPS(衛星測位システム)や船舶自動識別装置に異常が発生しました。欧米は、イラン軍が電子戦の演習をした結果だと警戒しました。まだ電子戦は発動されていませんが、GPSが使えなくなると、狭いホルムズ海峡で商船を操ることができず、封鎖と同じ結果をもたらします。

 こうしたイラクの水中兵器や電子戦の能力を知っているためか、米海軍は「ホルムズ海峡での護衛任務はできない」と表明しました。また、米海軍は、機雷などを駆除したくても、掃海艇を1隻も保有していません。掃海には、磁気を帯びないグラスファイバー製の特殊な艦船が必要ですが、2007年に最後の1隻が退役した後、後継艦をつくらず、機雷処理の技術も失ったままです。

 イラクの水中武器と米軍の実情を考えると、トランプ氏が叫ぶ「ホルムズ海峡の解放」は至難のわざであると思わざるを得ません。戦争の長期化と3度目の石油ショックの到来を覚悟したほうがよさそうです。(写真はファルス通信、イラストは朝鮮日報英語版、サイト管理人・清水建宇)

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