「金」の眼鏡で見た おカネの風景

銀の先物市場の舞台裏では・・

 ニューヨークの商品先物市場で1月30日、銀は大暴落しました。前日の1オンス(約31g)=120ドルから78ドルへと、33%も下げました。1日の下落率としては史上最大です。それから2週間たちましたが、銀の先物価格は一進一退を繰り返し、今週末は77.3ドルと、ほぼ同じ水準で終りました。

 では、先物市場は落ち着きを取り戻したのでしょうか。舞台裏をのぞくと、不安と疑心暗鬼が渦巻き、投資家は落ち着いてはいられないようです。

 貴金属取引の著名な専門家であるアラスデア・マクラウド氏が、2月13日(金)に書いたレポートによると、この週は取引量が大幅に減りました。年明け1月2日の取引量と比べると、わずか3分の1です。取引量が減ったこと自体、先物市場の位置づけが弱くなった兆候です。

 先物市場で信用売り(カラ売り)した投資家は、一定の期日までに受け渡し決済をします。これは、現物の銀を調達して引き渡すやり方です。

 以前は商品取引所(COMEX)に保管されている「指定在庫」を利用すれば、簡単に決済できました。指定在庫の銀は純度と重量が保証され、鑑定の必要がありません。また「倉荷証券」が発行されるので、いちいち現物を引き渡さなくても、証券の提出で済みます。

 しかし、この指定在庫に異変が起きました。昨年10月ごろから在庫が急に減り始め、30%も少なくなってしまいました。2月13日の未決済の「売り建て玉」が5万9418枚あるのに対して、受け渡しが可能な銀は、ほぼ3分の1の1万8606枚分しかありません。

 残りの3分の2の建て玉は、決済を先延ばしするなどして、現物の銀在庫が補充するのを待つことになります。しかし、ロンドン市場から移せる銀は、わずかしかありません。頼みの綱は中国の上海先物取引所から現物を仕入れることですが、13日の上海取引所の銀価格は89,2ドルで、ニューヨークより12ドル、13%も高いのです。中国は価格を上乗せして世界から銀塊を引き寄せているからです。

 信用売りの投資家は、安い価格で買い戻せば利益が出ますが、高い価格で買い戻せば損を被ります。13%も高い中国からの銀で決済するわけにいきません。上海市場での値下がりを待ちたいが、値下がりするのだろうか。ロンドン市場で移動可能な銀が、どこからか湧いてこないだろうか。空売りポジションを解消したい投資家は、いてもたってもいられないでしょう。

 こうした先物市場の舞台裏を報告したマクラウド氏は、こう書いています。第1に、ほんとうの銀の価格は上海で決定されており、ニューヨークやロンドンで発表される価格は偽物だ。第2に、欧米の先物取引の重要性は、ますます低下するだろう。

ニューヨークとロンドンは長い間、世界の商品取引の中心であり、価格の決定権を握ってきました。それは米英による金融支配の一部だったとも言えます。その地位を、中国がどのようにして奪いつつあるのか。来週はそこを考えます。(写真はCOMEX、グラフはA.Macleod、サイト管理人・清水建宇)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です