金の宝飾品を入れると送金するATM
金価格は歴史的な高値圏に張り付いたままです。田中貴金属によると、5月9日の買取価格は1g=1万6992円。日本では、販売時に消費税が加算され、逆に持ち主が売った場合は大阪取引所の先物価格に消費税分が上乗せした価格になります。
この2年間で1.75倍という異様な値上がりです。そろそろ売り時だと考える人が多いのでしょう。東京・上野の金買い取り業者をのぞいたら、金のネックレスや指輪などの宝飾品を売る人が順番待ちをしていました。
純金は柔らいので、変形したり、曲がったりしやすいため、ほとんど宝飾品は他の金属との合金で作られます。金の成分比は「カラット=K」で数えます。24Kは99.99%の純金、18Kは75%、12Kは50%となります。宝飾品は18Kが多いようです。
買い取り業者は、持ち込まれた宝飾品の純度を一つずつ調べ、重さを掛けて、純金に換算して何グラムになるかを計算します。その数字に、当日の金価格を当てはめて、代金を渡します。一人のお客に20分くらい時間がかかります。時間がかかるだけでなく、従業員の人件費コストがかなりかかると思います。
この作業を自動的にやってくれる機械があればなあと、買い取り業者は思うでしょう。インドのIndia Todayの4月末の記事によると、中国のKinghood Group社は、宝飾品の成分を自動的に検査し、代金を売り手の銀行口座に振り込む装置を開発し、上海で発表しました。

下記のURLで動画を見ることができます。
https://www.facebook.com/reel/1199405435049926
装置のデモンストレーションでは、40gの金のネックレスを入れ、銀行口座番号を打ち込んだところ、1g=785元(約1万5400円)と評価され、3万1400元が自動で振り込まれました。作業は30分以内。身分証明書などの書類は不要です。反響は大きく、予約制で実用化したところ、5月末までの予約はすぐ埋まってしまいました。
この装置がインドのメディアで大きく報道されたのは、インドでは農村部などを含めて金を愛好する習慣が根強く、14億人の人口の7割が金を保有しているからです。大手買い取り業者RPGエンタープライズ社のゴエンカ会長は「これは金のATM(自動預け払い機)だ。インドに導入されれば、新たなビジネスモデルになる」と語りました。
金の宝飾品を売る人は米欧でも増えています。フィナンシャル・タイムズによると、英国の質屋では、金の宝飾品の引き取り価格を問い合わせる人が急増しています。英国最大の質屋H&Tは、24年の決算報告で過去最高の利益をあげたと発表しました。金製品を持ち込む新規顧客数が過去最高になったことが主な要因です。
インドでは宝飾品を「貯蓄」目的で保有する人が多いので、ネックレスや指輪も24Kの純金がほとんどです。欧米では、着飾るために保有するので、18Kや16Kが主流であり、質屋さんは一つずつ純度を測らねばなりません。
中国製の「金専用のATM」は、インドだけでなく欧米でも必要とされるのではないかと思います。(写真はKinghood Group サイト管理人・清水建宇)