来年の「とんでもない予測」とは?
デンマークに本拠を置くサクソ銀行は、毎年の暮れに「とんでもない予測(Outrageous Predictions)」を発表します。意表を突く大胆な内容ですが、将来の方向を予言している場合も少なくありません。2026年はどうなるのか。8つの予測のうち、「おカネ」に関する2つを紹介しましょう。
一つは「量子コンピューターが稼働し始めたら何が起きるか」です。量子とは、粒子と波の性質をあわせ持った、とても小さな物質やエネルギーの単位です。世界各国がこれを利用したコンピューターの開発を競っていますが、米Googleは今年10月、「特定の計算においてスパコンの1万3000倍の速度を確認した」と発表し、注目を集めました。この計算速度だと、ほとんどの暗号を解読できると言われています。

――2026年◇月、量子コンピューターが実用化されました。その瞬間、これまでの銀行システム、暗号通貨のウォレット(電子財布)などが複雑な暗号で守られるという約束が崩壊しました。量子コンピューターがデジタル・セキュリティを破れることを証明したからです。
すぐ市場が動き出し、ビットコインなどの暗号資産が最も大きな打撃を受けました。従来の電子アドレスやパスワードが脆弱と見なされ、保有者は換金売りに殺到しました。暗号資産の取引所は出金を凍結しました。ビットコインは「ゼロ」に向かって暴落し始めました。
また、人びとは銀行の預金システムに対しても不信を強め、自分の預金を引き出しました。そして銀や金を購入しようとしました。金塊や銀塊は「パスワードが不要な究極の資産」とされ、金は1オンス=1万ドルに向けて急騰し始めました。
主要な量子技術企業は、量子パワーと人工知能(AI)を組み合わせたツールを使い、インターネット上の脆弱なところを迅速に見つけて政府や企業に伝えました。しかし、すべてを修正することは難しく、政府や企業は、旧来のシステムが壊れるほうが、再構築するよりも速いという現実に直面しました。
影響が広がるにつれて、中央銀行は緊急の資金供給ラインを開設しました。規制当局は決済システムを整備し直すため、各国と協力して「週末メンテナンス」に踏み切りました。資金はやがて動き始めましたが、保険料が高騰し、資金移動のコストが高くなったため、回復の動きは緩慢なままでした。
2つ目は「中国が金で裏付けられた人民元を域外の貿易決済に使い始める」という予測です。世界金協会(WGC)のデータによると、各国が準備資産として保有する金塊は、1位の米国が8133トン、中国は7位で2160トンに過ぎません。しかし、これは各国が申告した数字であって、実際の保有量は分かりません。予測は、この数字から始まります。

――2026年×月、中国は公表値をはるかに上回る金を保有していると発表しました。米国の公式保有量を上回る数字で、世界は驚きました。その後、中国はさらに大きな動きを見せました。域外で使われるオフショア人民元(CNH)を金で裏付けると宣言したのです。
これはCNHを現物の金と交換できることを意味します。発表後、オフショア人民元は歴史的な上昇を見せ、1ドル=7CNHだった為替レートは、1ドル=5CNHになりました。率にして14%上がったわけです。
世界は、ニクソンショックで米ドルが金と交換できなくなって以来、半世紀ぶりに金と交換できる通貨を目にしました。「黄金人民元」は、地政学的なリスクを低減し、欧米諸国の金融システムに依存せずに貿易し、価値を保全する手段を提供するものです。
中国は、湾岸の石油生産国、およびASEAN(東南アジア諸国連合)の11か国に対して金と人民元のスワップラインを提供し、金で決済する取引を開始しました。相手国はオフショア人民元(CNH)建てで請求書を発行し、受け渡しの手段として金を選ぶことができます。多くの国は、利便性の高いCNH建ての中国債券を保有するようになりました。
システムの信頼が高まるにつれ、貿易相手国の中央銀行や投資家が米国債を次々と売却したため、世界の準備資産における米ドル資産の割合が3割減り、米ドルは下落しました。米国債は値下がりし、米長期金利は上昇しました。金は1オンス=6000ドルを超えました。
オフショアの「黄金人民元」は基軸通貨の米ドルに取って代わるものではありませんが、米ドルの独占を終わらせ、世界の金融において永続的な第2の「錨」になるでしょう。
当たるも八卦、当たらぬも八卦ですが、来年に実現しなくても、2年後、3年後には実現しそうな部分もあるような気がします。では、皆さん、良い年をお迎えください。(イラストはSAXO BANK、サイト管理人・清水建宇)
