「金」の眼鏡で見た おカネの風景

イランと中国の秘密の関係

 イスラエルと米国が2月28日、イランを爆撃し、最高指導者のハメネイ師と家族を殺害しました。この攻撃が、イランから大量の石油を輸入してきた中国を弱体化させる狙いもあると、多くの新聞やテレビが指摘しました。

 中国の王毅外相は「主権国家の指導者を公然と殺害すること強く非難する」と述べ、敵対行為の即時停止と外交への回帰を求めました。とはいえ、抗議はしたものの、具体的な支援はなく、言葉だけです。

 もともと中国はイランの核武装を望んではいません。欧米の専門家は「米国とイスラエルの軍事力に恐れをなしたのだろう」「中国はイランへの支援に及び腰だ」などと論評しました。しかし、それは上っ面を眺めただけの、軽薄な見方ではないかと、私は思います。

 3月4日、「北京の傘下にあるイランの兵器庫」というレポートが出ました。筆者のジネブ・リボウアさんはモロッコ出身の女性で、ハドソン研究所の研究員です。ジネブさんは、2015年に欧米とイランが交わした「核合意」から説き起こします。

 米国のオバマ政権も加わったこの合意は、なぜか「核兵器」の開発だけを規制し、その運搬手段であるミサイルについては何も言及しませんでした。その空白を突いて、中国はイランのミサイル開発にあらゆる支援を始めました。推進燃料の材料から、電子回路に使う汎用部品、大量生産に必要な精密工作機械を売り、さらに米国のGPSに代わる「北斗」衛星測位システムの使用も認めたのです。

 米国の情報網はある年、イランの貨物船が中国から過塩素酸ナトリウム運んだことををつかみました。この物質は規制の対象外ですが、ミサイル800発分の推進薬の原料になります。中国からはこうした資材が次つぎと運ばれました。イランは10年をかけて液体燃料から固体燃料に転換し、誘導システムを完成させ、空爆に耐えられる地下発射施設を各地につくりました。

 通常兵器のミサイルは、核合意に含まれていないので、イランは大っぴらに増産に力を入れました。中国は資材を輸出し、石油を輸入する貿易に励みました。その結果、中国は兵士を一人も送り込むことなく、イランの軍事力を強化したのです。

 この間に、イランは通常ミサイルをどれほど生産し、貯め込んだのか。ジネブさんは米国とイスラエルが攻撃した時に、さまざまな射程距離のミサイルを少なくとも2000発は保有していただろうと推測しています。

 イランは反撃のため、サウジやクウェート、湾岸諸国にある米軍基地にミサイルを撃ち込みました。これらの基地にあるレーダーは、米軍にとって中東全域をにらむ「目」であり、軍事作戦の中枢です。イランは大量のドローンを組み合わせてミサイルを効率的に使っています。

 同じ3月4日、ブルームバーグ通信は、「貨物船がホルムズ海峡を通過した」と世界に報道しました。事実上封鎖されているはずの海峡を通過したのは「アイアン・メイデン」号というバラ積み船です。直前まで船籍が不明でしたが、通過の直前に「中国」と表示しました。

 この日、イラン革命防衛隊は「米国、イスラエル、欧州、それらを支援する国の船舶にはホルムズ海峡をの通過を許可しない。通過しようとすれば必ず攻撃する」という声明を出しました。裏を返すと中国の船はオーケーだということです。恐らく、今後、中国の石油タンカーやLPG運搬船がホルムズ海峡を行き来するようになるのでしょう。

 トランプ氏は「商船には米国の軍艦を護衛させる」と発表しましたが、石油業界は信じていません。先週末の先物市場で、石油は1日で10ドル以上値上がりして、1バレル92ドルになりました。カタールのエネルギー大臣は150ドルになるかもしれないと語っています。

 中国は「外交で解決を」と静かに語り、血なまぐさい戦闘から距離を置きながら、実際の利益をしっかり手にしています。ずる賢くて、実にしたたかだなあと、私は思います。(写真は新華社、イラストはAFP通信、サイト管理人・清水建宇)

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